いろいろなところで既に紹介されている本書。まだ前半部分しか読んでいないがおもしろい。ところどころ疑問に思う部分もあるけども、巻末に載っている主要貸本マンガ出版社リストを眺めるだけでも楽しい1冊。

昨年少女マンガ誌を調査した際に感じたのだが、『NANA』の男性キャラクターの顔の造詣は少し不気味な感じがする。なんでかと思っていたら、顎間接の位置が高いんだ。そのために面長なのに、妙に細い顔になってしまっているのだ。女性キャラクターの顎を引っ張って伸ばしたみたいな輪郭なのだ。正面を向いた顔が特にそうなっている。
あと今回気になったのがラストの方に再登場したハチとタクミの子供「皐」の顔だ。この顔も子供っぽくない気がする。タクミの子供だったということを示すためタクミに似た顔にしているのはわかるが、眉毛が中心によっているため、大人っぽい顔になってしまっているように思う。顔の輪郭事態はそれほど大人と変化をつけていないので顔の中身をもっと子供の顔にした方がバランスがいいように感じた。

少女マンガの中の純愛

以前に山田ユギは作品中で純愛を「距離」と「時間」によって描いていると言うことを書いた。で、純少女マンガではどうなのかということを考えてみた。大体において、最近の少女マンガでは、

  1. 「初めてモノ」初恋、初めての恋人。つまり、何も知らない状態、その恋愛に身を置く、キャラクター事態が純粋な状態である。純粋なキャラクターたちの恋で、純愛。
  2. 「こんなアタシを・・・モノ」上とは異なり、援助交際だのレイプだの、身体的に性的には大人であり、多くは「汚れてしまった」という意識を持つキャラクターが、そのキャラクターを過去ごと受け入れてくれるキャラクターと出会い、「本当の恋」を知る。つまり、いろんな事を知ったキャラクターが純粋に人を愛そうとする。

という2つが主流なようである。少女マンガの中の純愛でももちろん「障害」を乗り越えることで、純愛を表現するわけだが、その「障害」をこの2つは「無知」と「過去の傷」に設定しているわけである。山田ユギの「距離」と「時間」は、もちろん純少女マンガ界でも何度も、描かれている。だが、その分先が見えすぎてしまうところが否めない。(だからこそ、やおいマンガで描くと新鮮味があったのかもしれないが)そのため、純少女マンガでは
もっと困難な「障害」が用意されている。上の2つ以外では、年齢(これは、ペドファイルが問題視されている最近だからこそやも)近親相姦、貧富・・・などなど。昔から常に描かれているテーマもあるが、最近は障害がインフレ化しているように思う。かつて一条ゆかりなどの作家が「愛する」とは何かといったテーマを深く描いてきたが、最近の少女向け(10代まで)の少女マンガではハードルをいくつ越えられるか、そのハードルがどれだけ困難かがひたすらに描かれている。もちろん「愛」の根源を問う作品も多くあると思う。ただ、そういった作品は(最低でも10代後半)20代以上の読者を想定した雑誌に移行しているように感じる。何故、こうなっているのかは、もっと調査、考察してみなければ。

久々に

1人暮らしを始めるもので。

相変わらす、ロリな妹というどの読者を狙ったマンガなのかわからないこのマンガ。一応設定としては血のつながらない兄と妹に恋という少女マンガの歴史の中で連綿と描かれている王道のテーマを持っている。また妹に4人の兄更に、学校の同級生に、先輩と逆ハーレム型になってはいる。腐女子の萌えを狙ったようなキャラクターはたくさんいるが、どうしても、ロリキャラクターのかわいさの方が目立つ。この作家さんは萌え系雑誌でも描いてほしいなぁ。

  • 桃山なおこ『恋を胸に』(MARBLECOMICS/東京漫画社
  • アユヤマネ『泣くのはおよしよ仔リスちゃん』(MARBLECOMICS/東京漫画社

『ヘタレ男カタログ』などのアンソロジーを出版しているやおいマンガの新興(?)出版社から出ているマンガを購入。2冊とも、妙な静かさを持ったマンガ。桃山なおこの『恋を胸に』は、線が強弱が強い絵で、淡々と表情を変えずに、若者の恋を描いている。特に、ノンケの男が、ゲイの男を意識してしまう様がそっと描かれていて、やたら赤面したりしないところがいいなと思った。ただ何より、トーンをほとんど使わない白と黒のコントラストのはっきりした画面構成と太い線が印象的。このままどうなるか見守っていきたい。アユヤマネの『泣くのは〜』はポップな絵柄で、やおい少女マンガの王道ストーりーを絵がいている。こっちも絵柄が印象的で、ぷにぷにとしたいわゆる手塚系のディズニー系の絵柄になっている。少女マンガでギャグ化した状態のような絵で、男子寮や、大正時代といったとても「やおい系」らしい話を描いていて、もしこれが、普通の目がキラキラした顎の長い絵で描かれたら特に、印象に残らないようにも思う。この絵で描くからおもしろいんんだろう。
やおい系のマンガも絵にしてもストーリーにしても幅が広がっていることを感じる。2冊とも派手さは無く、淡々としていて、既存のやおい系マンガとは違うことをしようとしているように感じるが、コレは出版社の意向なのだろうか。アンソロジーもチェックしてみるか。